「時間をかけて弾きこんでもらいたい」町屋勘兵衛門の願い

自粛解除となった日曜日。
川越の「まちかん」に行ってきました。

昨日、買った三徳包丁を受け取り、
我が家で33年使っている京都で買った「常信」の包丁を
研ぎに出すためです。

「まちかん」は常に研ぎ包丁を200から300受けていて、
お願いしても出来上がるのは1~2か月後。

そこで、主人が昨日、
「まちかん」で新しい三徳包丁を購入してくれました。

「まちかん」では購入を決めた後、
1時間かけて研ぎ直してからの手渡しとなりますので、
次の日に研ぎに出す包丁と引き換えに受け取ることにしました。

ずっと気になっていていつか手に入れたかった「まちかん」の三徳包丁。
7年前に一度、「常信」の包丁の柄を直してもらい研いでもらった時、
「まちかんの包丁が欲しいのですが」と言ったところ、店主に

「お客様の『常信』は良い包丁でございます。
 これを大切に使われるのが一番かと存じます」

言われたのです。

でも、研いでもらった「常信」の切れ味が
今までのどこで研いだものと違うのに驚き、
「こんな研ぎ方のできる人が作る包丁はどんなものなのだろう?」と
思っていました。

今日は念願かなって、「まちかん」の包丁を手にしました。
持ち帰る前に店頭で

「どうぞ試し切りなさってください。
 お気に召さなければ研ぎ直しますので」

大根を出されました。

(うわさには聞いていたけれど、本当に店頭で「試し切り」です)

私が、2,3切れ切ってみると、包丁がまな板に「トン」と音を立てました。

「頓所様。今の音は包丁の『悲鳴』でございます。
 まな板に音を立てるように包丁を降ろされては
 包丁が本領を発揮できず『悲鳴』をあげます」と店主。

「このようになさってください」
やさしい口調で切り方を教わりました。

そして、

「当店の包丁は、天保年間の創業以来、
切れ味を持続させるため一般の包丁よりも
堅めの焼き入れをしております。

 2年3年と使いこみになられ、
数度の研を経過することにより次第に
鋼そのものに安定と一種の粘りが出て参ります。

 よく切れる包丁は優れた楽器のようなものです。
 手になじみ、その方だけの楽器となり
音なき妙音を厨房で奏でるはずです。

 良い刃物はお納め申し上げた時点から
20年30年先にその真価を発揮いたします」

そして最後に

「どうぞ、包丁を厨房の名器として

長い時間をかけて

弾きこんでいただきたいと念じております」

という言葉と一緒に我が家の一員となりました「まちかん包丁」

ピアノと一緒。

丁寧に取り扱い、お料理を楽しみながら
育てていきたいです。

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この記事を書いた人

頓所 裕子のアバター 頓所 裕子 Allemandeミュージック 主宰

埼玉県飯能市山手町にあるピアノ・バイオリンの音楽教室
Allemande(あるまんど)ミュージック 主宰

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